ITコンサルタントとは
ITコンサルタントとは、企業や組織に対してITシステムの導入や改善に関するアドバイスや支援を行う専門家のことです。
企業のITシステムの設計や開発、導入や保守・運用、セキュリティ対策など、幅広い領域でのコンサルティング業務を行っています。
ITコンサルタントの種類と業務内容
ITコンサルタントの仕事内容は非常に幅広く、業務領域でいくつかの種類に分けることができます。
IT戦略コンサルタント
IT戦略コンサルタントとはクライアントの抱える経営レベルのIT課題について、助言を行う役割になります。
具体的には、IT×M&A・IT-PMI・ITガバナンスの構築・IT投資計画の策定などを行います。
※ITシステム導入の要件定義も含めてIT戦略コンサルタントと謳っているコンサルティングファームも増えてきているので注意が必要です。
ERPコンサルタント
ERPとは「Enterprise Resources Planning(企業資源計画)」の略称で、ERPシステムとは企業のあらゆる業務プロセスを統合してデータの一元化や情報共有を行うシステムです。
近年ではERPシステム=SAP(SAP社が提供するERPソフトウェア)と定義されることが多くなっています。
ERPコンサルタントはシステム導入のために顧客の抱える経営課題を分析し、システムの要件定義と開発のマネジメントを行います。
CRMコンサルタント
CRMとは「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の略称で、CRMシステムは顧客情報の一元管理や営業プロセスの最適化などを行うシステムを指します。
ERPシステム同様、近年ではCRMシステム=Salesforce(セールスフォース・ドットコム社が提供するCRMプラットフォーム)と定義されることが多くなっています。
ERPコンサルタントとは業務内容が近いため、パッケージ導入コンサルタントとして一括りにされることも多いですが、こちらはシステムの導入後にデータをどのように活用していくか、というマーケティングの領域まで携わることも多いです。
SCMコンサルタント
SCMとは「Supply Chain Management(供給連鎖管理)」の略称で、原材料の調達・製品の生産・製品の配送・在庫管理・販売・カスタマーサポートなど、原材料から消費者にいきわたるまでの一連のプロセスを管理することを指します。
そして、SCMコンサルタントはサプライチェーンの各プロセスから企業の経営課題やコストの削減を導くことを目標としており、SCM管理システムの提案と、システムの導入から運用までのコンサルティング業務を行います。
PMOコンサルタント
PMOとは「Project Management Office」の略称で、組織におけるプロジェクトのマネジメント支援業務を指します。
PMO機能を設計・構築・運用するための戦略的な支援を行いますが、主な業務内容は管理業務、調整業務になっています。
大手企業では規模が大きくこれらの業務が大変なためPMOコンサルタントが求められているという現状があり、ベンチャー領域のコンサル業界ではPMO業務が多発しています。
ITコンサルタントと他業種との違い
ITコンサルタントはIT技術を用いて企業の課題を解決する職業であるため、他のITソリューションの提供に関わる業種と混同されることも多いです。
この段落ではそのような他業種との違いについて紹介します。
業務コンサルタントとの違い
ITコンサルタントはシステム導入などIT技術を通じて顧客の課題を解決する一方で、業務コンサルタントは経営学や組織論の考えに基づく業務フロー改善を通じて課題解決を行います。
しかし近年ではITシステムの進歩により、業務に合わせてシステムを作るという流れから、システムに合わせて業務を変革するという流れに変化しています。
そのためシステム導入前後の業務フロー改革を主に行っており、その業務内容はITコンサルタントに近づいています。
SE(システムエンジニア)との違い
SEの主な業務内容はシステムの設計や構築、保守運用が主要な業務内容です。
ITコンサルタントとの一番の違いはクライアントと顔を合わせる機会がほぼないという点です。
クライアントと対峙して要件を決定するのがITコンサルタントで、そこで決まったものにしたがって設計などの実作業を行うのがSEというイメージです。
ITコンサルタントへの転職事例
ITコンサルタントへの転職事例は前職によって主に2つに分けることができます。
システム会社のSEからの転職
システム会社のSEからITコンサルタントへ転職する事例は多く、40代前半までの年齢であれば転職することが可能です。
この理由として、SEとITコンサルタントの業務内容に親和性があることが挙げられます。
ベンダーとして様々な顧客を相手にしているSEはITコンサルタントと業務内容が近く、幅広い知識にキャッチアップする適性を評価されるため転職において有利になります。
事業会社の情報システム部門からの転職
事業会社の情報システム部門からITコンサルタントへの転職も多いです。
しかしSEとは異なりこの場合は30代半ばまでの年齢が転職を実現する限界となるため注意が必要です。
これは情報システム部門がSEとは異なり事業会社という一つの顧客のみを相手としており、複数の業界にキャッチアップする経験がないことが大きな要因になっています。
ITコンサルは高収入?
ITコンサルは一般的な会社員よりも高収入といわれることが多いです。
実際に我々が支援した事例では、20代で400~500万円の年収であったSEがコンサルタントへの転職の結果、200万円年収が上がった方もおり、同年代の平均年収よりも高い給与を得ている人が多いと考えられます。
また、大手コンサルティングファームのITコンサルタントであれば、年収2000万円を超えることもあります。
ITコンサルタントに必要な資格
ITコンサルタントになるために必要な資格は特にありません。
しかし持っていることで転職活動や行う上で有利になる資格はいくつかあり、それらを紹介します。
ITストラテジスト
ITストラテジストとは、企業の経営戦略とIT戦略を統合的に考え最適なIT戦略を策定する人材です。
そのためには高度情報処理技術者試験の一つであるITストラテジスト試験に合格する必要があります。合格率は14%と非常に難しい試験になっているので、挑戦する際はしっかりと対策をして試験に臨みましょう。
公式サイト:
https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html
P2M
P2M(プロジェクトマネージャ)は日本プロジェクトマネジメント協会が認定しているものであり、保有していることでプロジェクトの責任者に必要とされる知見やスキルを証明することができます。
この資格は「プロジェクトマネジメント・コーディネーター資格試験(PMC)」「プロジェクトマネジメント・スペシャリスト(PM)」「PMSプログラム試験(PMS)」「プログラムマネジャー・レジスタード(PMR)」の4種類の試験に分かれており、合格率はいずれも50%~70%程度と難易度の高いものになっています。
公式サイト:
https://www.pmaj.or.jp/p2m/exam/about_p2m_exam.html
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営に関するアドバイスや支援を行うための資格です。
中小企業診断士になるためには、中小企業診断士試験に合格する必要があり、そのためには一般的な経済・法律・経営の知識から実務的な経営課題まで幅広い知識が必要になります。
合格率は一次試験が28.9%、二次試験が18.7%と低くなっていますが、国家資格であるため診断士としての信頼性や信用性が認められ信頼性が非常に高まります。
公式サイト:
https://www.j-smeca.jp/contents/007_shiken.html
ITコーディネータ
ITコーディネータは企業内で情報システムやIT関連の業務を適切に進めるための調整や提案を行う人材を指しており、情報システムの企画・設計・開発・導入・運用など、ITに関する業務全般に対してコーディネーションを行います。
試験に合格するためにはコンピューターやネットワークについての基礎的な知識だけでなく、ITプロジェクトに対しての実務的な知識やスキルも必要になり、合格率は50%前後となっています。
公式サイト:
https://itc-shikaku.itc.or.jp/
その他ベンダー資格
IT関連の製品、サービスを提供するベンダーが設定するベンダー資格を取得することで、ITコンサルタントとしての専門性の高さを示すことができます。
具体的にはAWS認定資格、Salesforce認定アドミニストレーターなどがあげられます。
公式サイト:
https://aws.amazon.com/jp/certification/
(AWS認定)
https://trailhead.salesforce.com/ja/credentials/administrator
(Salesforce認定アドミニストレーター)
ITコンサルタントを目指すには
ITコンサルタントと一概に言ってもその業務内容は非常に多岐にわたるため、様々な業界の経験者に活躍の機会がある職業です。
また、保有していることで評価される資格はありますが、必須ではないため未経験からでも挑戦しやすい職種であるともいえます。
ITコンサルタントに興味を持っている方は業務内容や求められる能力、経験についてしっかりと理解を深め、理想の転職を叶えましょう。